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はらはらと落ちた金色を見つめる。

しょきり、と指を動かす。また一房、床に落ちた。
夕方の、小さな窓から差し込む夕日が眩い。
かたりと静かな風に揺れる窓の中で、ぽつんと置かれた椅子に座り髪を切る。
逆光により黒ずんだ床に散らばる金色のそれは、先ほどまで確かに自分と繋がっていたものだ。



覚えている。



オレの髪を一房そっと掬いとり、黙って口づけたアンタを。
立ち寄った司令部の執務室で、いつものようにソファにふてぶてしく座り込んでいた時だった。
なんの話をしていたのかはよく覚えていない。あまり、いい会話ではなかったような気がする。
進展しない日々に焦り、苛立っていたオレは、アンタに酷く侮辱的な言葉を投げつけた。
突然椅子から立ち上がり近づいてきたアンタに、オレは殴られるんじゃないかって一瞬目を瞑った。そう思ってしまうぐらいのことを、アンタに言った。
でも、予想していた───願っていた手のひらは、一向におりてこなかった。
変わりに降ってきたのは、今まで聞いたことがないくらいの、甘く、艶に満ちた声。


『手に入れてはいけないと、わかっていながらも、手に入れたくなる』


恐る恐る瞼を上げれば、オレをじっと見つめるアンタがいた。


『君にとっては、重いだろうね』


オレは茫然と、目の前にある光景をただ見つめた。
一房掬い取られた髪に、至近距離から大佐の吐息がかかる。


『だから、これに口づけるだけで勘弁してやろう。その唇は、いつかの大事な人のためにとっておきなさい』


アンタの瞳は、真っすぐだった。艶やかな口元の微笑みに、制止も、抵抗も忘れた。
薄く開いた口元が、だんだんと髪に近づいてきた。
接触は僅かだった。だというのに、感覚のない髪先がとても熱く感じられて、オレは思わずアンタを突き飛ばして逃げた。きっと、これもアンタにとっては予想通りの行動だったのだろう。
だからアンタは、オレを追いかけもしなかった。


『……忘れたいのであれば、忘れてくれていい』


背中越しの軽口。そこに含まれる、切な気な響き。
そんな声をするくらいなら、追いかけてくればいいのに。


『また戻って来る気があるのなら。いっておいで、鋼の──待っているから』


アンタはオレを追いかけなかった。あえて逃げ道を作ってくれた。
大人は、いつまでもオレという子どもを甘やかす。余裕のない子どもに、逃げ道を作る。
待っているからと、オレに決定を委ねて。でも、その逃げ道は果たしてどちらのものなのだろうか。


口付けられた髪が、恥ずかしかった。

口付けられた髪が、嬉しかった。

口付けられた髪が、悔しかった。

口付けられた髪が、恨めしかった。


大人の殻を被ってオレから逃げる大人が、憎らしかった。













はらはらと落ちた金色を見つめる。

最後の一房を、しょきり、と切り落とす。
床に散らばった金は、この世界ではどこか色褪せて見えた。飛行練習だろうか、遠くの方から聞こえる戦闘機の轟きが頭蓋骨に響く。もう耳に慣れてしまった爆音だ。
ささやかな風で、窓が揺れた。時間は、残り少なかった。深夜には此処を発つ。戦火と協会の手から逃れ、やらなければならないことをするために。
3週間と短い間だったが、暮らすことを許して貰った此処を離れる。
今この瞬間、ここで髪を切る意味を自分に問う。そのうちここにも戦火の手が伸び、爆撃に家ごと焼かれるかもしれないのというのに。それは明日か明後日か数ヶ月後か、それとも数年後か。
この血と炎に塗れた戦いの世界では、たしかに多くの人間が生を営んでいる。オレも、その一人だ。

「兄さん」

トントン、と叩かれる扉。向こうから聞こえてきたのは、これも耳に慣れた幼い弟の柔らかな声だ。
この世界に来ても、唯一変わらない愛しい家族。

「ロイさんが、みんなで夕飯食べようって」
「おう、今行く。ごめんな、先行って手伝っててくれ」
「わかった」










協会に終われ、逃げた慣れない田舎道で、弟と二人行き倒れた時、たまたま助けてくれた家族。
多くは聞かず、何も言わず、空室を貸してくれた。
鳶色の瞳を持つ、美しい母と、幼い娘と息子、そして───父親。
黒髪と、切れ長の黒い瞳を持った、見知った姿形を持つ男。
畑を耕すことを生業として、毎日泥と草に塗れながら、普通の家庭を持っていた。こっちの世界では。
土地を捨ててはいけない。私たちはここを離れるつもりはないんだと。
離れ離れになるくらいなら、家族と共にここに残る。そう決意を固めた大人。
なに、戦いが広がるとも限らないしな、こんな小競り合い直ぐ終わる、召集命令なんて来ないさ。
なんて朗らかに笑いながら、らしからぬことも言っていた。
指や心に熱き焔を宿し、どんな時でも前線に立ち内戦に実際に赴いていた、あっちのアンタじゃ考えられないような台詞だ。


声も。顔も。
皮肉げに、頬をあげる仕草も。
考え事をしている時に、机をカツカツと指で弾く仕草も。
忍び足が、得意なのも。
コーヒーを、最初の二口は舐める程度に啜る仕草も。
紅茶には、角砂糖を2つ入れるのも。


ぜんぶ、同じだった。 何度も目を、疑うくらいに。
子を溺愛する立派な父親だったことには、驚いた。どっかの眼鏡をかけた、頭の切れる優しい親バカとそっくりだ。 あっちでは、アンタができないことをアンタの親友がやってた。
あの人はアンタの代わりに妻を愛し、子を愛していたのだろう。
けれど、こっちのアンタの側にあの人はいない。アンタは、あの人の名前も知らない。
だからアンタは妻を愛し、子を愛するのだろう。
あっちのアンタが選ばなかったことを、こっちのアンタは、選んだ。
選ぶことができたんだ。


子供達の楽しそうな騒ぎ声が聞こえる。騒がしいわよ、と嗜める母親と、いいじゃないかと、穏やかに笑う父親。
もうずっと前に、耳に染み込んでしまった低いバリトン。
幸せに満ちていた。あたたかな世界が、ここにはあった。
​この重い時代の波に飲まれてもなお、彼らはとても、真っ直ぐだった。


『その唇は、いつかの大事な人のためにとっておきなさい』


唇を許したいと想うほど、大事な人なんて。

「アンタ以外に、いるもんか……」

唇が歪んだ。どうしてあの時、奪ってくれなかったのかと。
こっちの世界で、アンタに既に大事な人たちがいるくらいなら。
アンタが、口付けたいと心の底から想う人たちがいるのなら。
まだ何も知らぬ子どもだったあの頃に、無理矢理にでも奪って欲しかったなんて、今になって、思う。
オレの心を無慈悲に奪ったのは、アンタのくせに。
オレに道を指し示し、淀んだ瞳に焔を灯してくれたアンタは、ここにはいない。






ゆっくりと、椅子から立ち上がる。鏡に映った短い金の髪は、仄かなセピアに揺れていた。
オレが散らした髪に、この家の者が気づくのはいつだろうか。
明日だろうか、もぬけの殻となった部屋に、狼狽え旦那を呼びに行く奥さんの姿が目に見える。慌てて来たアンタが、これを見つけて顔を顰める。そうして、終わる。
内緒で出て行くんだからせめて片付けなよ、と弟は怒るかもしれないが、片付けるつもりはない。
助けてくれた恩も忘れて、挨拶も、部屋の掃除すらしないまま出て行った愚かなオレを、いつか無礼な客がいたなと、笑い話にしてくれたら。
今から数十年後でいい。
懐かしい思い出を語るように、名前も顔を忘れてしまったが、金髪の兄弟だったと。兄は背が低かったなと、酒を片手に友人たちと談笑してくれたら、いい。





とんとん、と扉を叩かれる。
エドワード、と、扉の向こうから名を呼ばれる。
くぐもった声。エドワード、来れるかい。子供たちが君を待っていると、柔らかな、声が。

「すみません、有難うございます。ここだけ終わらせてから行きますから、先に食べていて下さい、……ロイさん」

熱心だね、わかった。待っているよ。僅かな苦笑と共に、彼は階段を降りていった。


『鋼の──待っているから』


扉は開かれぬまま、彼は団欒に集う、家族の元へ戻る。
床に視線を落とす。あの時口付けられた髪が、床に散らばっていた。






──たいさ。 たいさ、たいさ、大佐。

オレは、弟と共に生きて行く。だからオレは、アンタがその唇で唯一触れてくれた髪を置いて行く。
アンタの体温が未だに残る髪を、置いて行く。アンタが家族と健やかに暮らすこの家に、アンタとの大事な思い出を置いて行く。これは、オレが持っていてはいけないものだから。

ただ、幸せであれと、願う。アンタが守る、この空間が。

そんな些細な願いだけでも叶えてくれたら、あとはもう何もいらない。
無礼な客がいた記憶すら薄れ、アンタがオレの名前と顔を思い出せなくなっても、構わないんだ。
だからどうか、どうか、オレのことなんて。




綺麗に忘れてください。












「行くんだね」

夜中に、なるべく音を立てないように窓から飛び出したオレたちの背後に、彼はいた。

「……なんで」

呆然と呟く。それは弟も同じだった。そんなオレたちに肩を竦め、彼は皮肉気に笑った。
上がった口角に、皺ができる。

「今日の夕食の態度が、二人とも少しおかしかった、からかな」

君に至っては髪まで切ってきたしな、そう微笑む彼は、僅かな月明かりの中、足首まである緩めの紺色のガウンを羽織り、ベランダにたたずんでいた。
彼が一段下がれば、ガウンがひらめく。部下などを従えているわけでもないのに、その姿は、まるで。
いつかの、アンタのようで。

「安心してくれ、あれには言っていない、私だけだ」

奥さんと同じ部屋で彼は普段眠っている。足音をたてないで、気づかれないように出てきたのだろう。
やはり本質は、同じだ。

「……部屋に置手紙を、置いてきた。そこに書いてある通り、妙なやつらが来てもオレたちのことは知らないと伝えろ。読み終わったら必ず燃やせ、それがアンタたちのためだ」
「もう、兄さん……すみません、よろしくお願いします」

これまで使ってきた敬語をかなぐり捨て、礼の一つもしないまま淡々と述べたオレに、彼は少し驚いたが、嫌な顔すらしなかった。
ただ、何かを悟っているかのように、静かに目を伏せ深く頷いた。

「……わかった。事情は聞かない。いつか、何も言わずに出て行くだろうとも予想はしていた。君たちがとてもいい子達だということはわかっているからね。ただ、どうしても言いたいことがあって」

すっと、彼が手を伸ばした。

「──元気で、アルフォンス君、エドワード。短い間だったが、君たちと過ごせて楽しかったよ」

慈しみに満ちたその声色。可愛がってくれていたのだと、改めてわかる。

「子供達の、遊び相手になってくれて有難う」
「……ロイさん」

弟が、涙を堪えながら彼の手を握る。黙って出て行こうとしてごめんなさい、そんな懺悔を、彼は微笑を湛えたまま少し下がった眉で受け入れていた。
記憶が完全には戻っていない弟はまだ、幼い。よくしてもらった家庭への情は大きいはずだ。 弟との抱擁を終えた彼が、ゆっくりとこちらに向き直った。

静かに伸ばされた手を見下ろす。

敵を葬るため、指をこすり続け太くなっていた親指と中指は、他の指と同じ太さだった。 ただ、農機具を用いて毎日作業している彼の指は、かさかさに荒れてはいるけれど。
身元もわからぬオレたちを保護し、匿い、もてなし、明日も早いだろうに、こうして見送りにまできてくれる。この3週間、なぜ行き倒れていたのかを言い淀むオレたちに、大した質問もせず、何も聞かずに、ただ真っ直ぐに接してくれた。
そこには、なんの打算も疑心も、敵意も感じられなかった。
こんなに甘くて良いのだろうかとこちらが不安になるほどに、あたたかな家庭だった。




軍人でもない。大佐のようで、大佐でもない。

国を背負う男でもない。部下を従える男でもない。

焔を操る男でもない、人々の上に立つ男でもない。

片田舎に住み、妻を愛し子を愛し、農具を片手に地を耕す、一人の優しい男性、ロイ・マスタングという人間が、そこにはいた。

オレは今初めて、それに気がついた。





「……オレには」

目を瞑れば青い軍服が、脳裏に翻る。
あの黒い髪と、黒い瞳と、焔が刻まれた白い手袋が。鮮やかに。

「オレには、大切な人がいる」

唐突なオレの独白に、さすがの彼も面食らったようだ。でも止まらなかった。
湯水のように煽れ、決壊する。溢れることはない涙の粒が、言葉の雨となる。

「でも、その人とは、もう会えない。だからオレは、その人に、オレのことを忘れて欲しいと思ってる……でも、でも本当は、心の底ではオレは、忘れないでいて欲しいって……オレは忘れたいのに、忘れてほしくないって、思ってしまうんだ。オレは受け入れているふりをして、本当は受け入れてない。本当は未練たらたらなクセに……オレは、欲深くてズルい人間だ。気持ちと向き合えなくて、逃げてる。オレは……オレは」

こんなことを、彼に言ったって意味がないのに。湧きあがる想いに頭を振り、唇を噛む。
伸ばされたままの手。見たことあるようで、どこかが違う手。
あの大きな手に髪を包み込まれ、そっと口付けられたのは、もうはるか遠くの出来事だったような気さえする。数年前のことでさえ、この様だ。人間は老いていく。
オレも年月を重ね年老いていくうちに、いつか全てを、記憶から消し去ってしまうのだろうか。


「アイツを、忘れたく、ないんだ」

あの柔らかな声も、オレを見つめる熱のこもった視線も、手のひらの温かさも。

「忘れてほしく、ないんだ……」


『……忘れたいのであれば、忘れていい』


今オレは、アンタの言葉の重みを初めてしった。
アンタは、オレを追いかけてはこなかった。あえて逃げ道を作り、オレに決定権を委ねた。ズルイと思った、酷い大人だとも。いっそのこと奪って欲しかったと。
でも、今ならその気持ちがわかる。


なあ、大佐。大佐はいま。


大人の殻を被って、アンタから逃げ出そうとしているオレを、憎らしいと思っているのかな。




「───大丈夫だ」

闇夜を切り裂く、穏やかな低音にはっとする。
黒々とした瞳は、逸らされることなくオレを見ていた。
伸びてきた手を横目に、オレも、大佐を──彼を見つめた。

「もしも……君が君の大切な人を忘れたとしても、君の大切なその人が、君を忘れたとしても」

するりと、乾いた指先で撫ぜられた頬が、あたたかい。

「私は、君がその人を大切に思っていたことを、忘れない」

流れていないはずの涙を、拭われる。
だんだんと近づいてくる黒い瞳を、オレはただ見つめることしかできなくて。

「忘れたくない、忘れてほしくないと、君が叫んでいたことを私は覚えているよ。ずっと」

静止も、抵抗もできなかった。
額に、柔らかなものがあたる。髪を通し、皮膚を通し、親愛に満ちた感情が伝わってくる。その瞬間、目が開けた。セピアだった世界に、初めて色がついた。風が吹く。か細く聞こえる戦闘機の轟が、焔を携え軍靴を踏みしめていたアイツと重なり、遠くの空へと消えていく。

「だから、安心していい。君たちの旅が、うまくいくように願っているよ」

接触は、一瞬だった。簡単に離れた唇。ぽん、ぽん、と頭を撫でられる。
歳の差は、こっちでもやはり14だ。親子と呼ぶには近すぎる年齢。
子供たちにやっているのをよく見かけた。きっと、兄が弟にするような、軽い親愛のキスだろう。



彼のその言葉に、特別深い意味はなかったのかもしれない。



たった3週間匿った兄弟に対する、その場で思いついた別れの言葉なのかも、しれない。
荷物を強く握りしめる。結局彼も、唇にしてはくれなかった。
当たり前だ。彼は、アイツではないのだから。

でも彼は、覚えていている、といってくれた。
オレがアンタに抱く、この心が引きちぎれそうなほどの大切な想いを。これからもずっと、忘れないと。


──こんなことが。
体の奥底から、湧き上がるものがある。
こっちの彼と、あっちのアンタが、こんな形で繋がるなんて。

──ああ、なんてことだ。
神など、いない。自分の中には存在しない。

けれども。これはまるで。


奇跡、じゃないか。







額に一瞬だけ宿った熱を。
とても小さく噛みしめ、目を閉じる。


「……ありがと、ロイさん。世話になった」

​瞼をあげる。
はっきり色づいた世界に、彼はしっかり、立っていた。


『いっておいで、鋼の──待っているから』


「……さよなら」


一歩、離れる。彼はするりと、手を離した。
その軌跡を目で追う。焼き付けるように。

夕暮れの中、差し伸べられたアンタの手を、オレは軽く叩いた。
それはもう随分と、昔の出来事のように思える。
オレにとっては2度目のさようなら。
でも、今度こそ、最初で最後の、さようならだ。


「ありがとうございましたロイさん。僕も兄さんも、本当にお世話になりました。奥さんにもあの子たちにも、よろしくお伝えください」
「ああ、二人とも元気で……さようなら」

待っていると、言ってくれたアンタは、ここにはいない。彼も、また会おうとは言わない。
オレたちがもう会うつもりはないということを、彼は十二分に理解していた。軍人でもないくせに、やはり聡い男だ。弟と共に、深々と頭を下げる。


「行くぞ、アル」
「うん、兄さん」


背を向け、弟と夜道を歩き始める。
やるべきことはまだまだある。まずは、この世界に持ってきてしまったものを探し出さなくては。振り向きはしない。きっと、彼はもう家の中に入っただろう。
3週間という長いようで短い共同生活は、あっけなく終わりを告げた。
夢のようで、夢ではない。
一つの繋がりが、綺麗に消えた。



痛みは、まだある。
これからも、心が擦り切れるまで何度も思い返しては、呼吸が止まるような切なさに苛まれるのだろう。いっそ忘れてしまいたいと、願うほどに。





でも、忘れない。






オレは、弟と共に生きて行く。アンタとの大事な思い出を胸に。
オレはきっと最後まで、アンタの全てを覚えてる。
世界は違う。けれど、きっと最後まで同じ道を、時を歩んでいる。隣にいる。
触れることは、もう二度と叶わなくとも。
アンタの隣にはオレがいて。
オレの隣はアンタがいる。

『よ、大佐』
『やあ、鋼の』

どんなに苦しくても苦くとも、覚えてる。
いつかその声も、顔も、姿形すら朧げになって、忘れてしまったとしても。
覚えてる。互いの温もりが、確かにあったこと。
だからどうか。




大佐、大佐。

どうか、オレのことを。

ずっと。








忘れないでいて。






オレは、オレを熱い眼差しで見つめていたアンタを、忘れない。
たった一度だけ、髪に口づけてくれたアンタを、忘れない。
​オレの、大切なアンタへの想いを忘れないと言ってくれた彼を──貴方を、忘れない。






1ヶ月後。







戦火に巻き込まれることとなったこの美しい場所を。


オレは生涯、忘れない。










 

こちらの大佐はユダヤの血を引くイメージがあります。

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