top of page

暗い夜の中、横たわっている小さな身体の傍に屈む。

一匹だけたかっていたハエを追い払い、柔らかそうな肌をするりと撫ぜれば固かった。

 

「このままではここで襲ってしまうよ」

窪みの深くなった瞼は開かれない。両手で頬を包み込み、そっと顔を寄せる。

近づいただけで冷気が肌に刺さるようだ、身に覚えのある冷たさだった。

 

「いいのかい?」

 

いつものように目尻、頬、耳、顎、首筋、と口づけて最後は唇に。

指で口を開かせ深く重ねる。

少しだけいつもと違う臭いがした。この子の匂いのようで、この子ではない臭い。

瞬間的に嫌だと思った。

舌を差し込み内類を愛撫し、ビクリとも動かぬ舌にがむしゃらに絡める。

けれどもしつこく口づけしても反応はない。

深く息を流し込んでも返ってこない。二、三度と続けても結果は同じだった。

 

『その時は大佐が 燃やしてよ』

 

そう言って笑っていた君は、今は青い空の下にいない。

 

その代わり、美しい星の間にいた。

 

彼の黄金の髪がゆるやかに流れていく。

なんだ、別に私が燃やさなくとも輝いてるじゃないか。

 

やっと、涙が出た。

bottom of page