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これは告白だと、笑う彼のなんと残酷なことか。

「正直、君の過去なんていらない、君の今もいらない。ただ、君の未来は欲しい」

汗ばんだ素肌で触れておきながら、そんなことを言うのか。

「今までもこれからも、私のものになんてならなくていい」

優しく唇を奪ってくるくせに、そんなことを言うのか。

「君の確実な未来が欲しい。そのために私は、私達は今を生きている」

その未来にアンタはいないのかよ。そう問えば彼は笑った。

真っすぐで純度の高い、重い瞳に空を見た。

人工的な明りも届かぬ真夜中だというのに何よりも輝いて見えるのは月明りのせいか。

それとも彼の生命力のせいか。彼はオレを腕の中に抱き留めながらどこを見ているのだろう。戦いのない世界か。砂漠すらも潤う大地か、人々の笑顔が溢れる温かな未来か。

こんなにも前を向いて今を生きるアンタが、誰よりも望んでいるのが他者の未来のみだなんて。

真っ直ぐなのに狂おしい。これが強き英雄の、残忍な殺戮者の目だと言うのならば、戦争を知らない無知なオレは戦争を憎む。強く憎む。思慮の浅い子どもだと呆れられたっていい。

「オレだって大佐の未来が欲しい」

では両想いだな、なんて。

いつも通りの態度で抱きしめ返してくれるくせに。告白の返事には言葉を返してくれもしない人だから。

アンタはそういう残酷な人だから。

未来なんて、誰にもわからない果てを決めてしまえる人だから。

オレは世界中の誰よりも、貴方の未来を望んでしまうのだろう。

シュバルツシルト面

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